[R15] 女性を愛する天才の俺様、異世界を救う (JP) – 1章 1節 11話 科学の世界神 アベル(ティアラ視点)
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R15
第1節 地球の女神(第1章 勇者の村)
第 11 / 12 話
<結婚しようね>
これはユウタとアンが夜景デートをしていた時の事。
*「僕もアンの事が大好きだよ。うん、そうだね。落ち着いたら結婚しようね」*
昔の私とアベルを思い出してしまいます……。
かくしてティアナはアンがユウタと夜景デートしている様子を見てふと過去の似た様な光景を思い出した。
<愛しているよ>
これはティアラがまだ星神で勇者のアベルと見つめ合って愛を語り合っていた時の事。
「愛しているよ、ティアラ」
アベルはティアラを見つめながら愛を伝えた。
「わたくしも愛しているわ、アベル」
かくしてティアラもアベルを見つめながら愛を伝えた。
<そんな頃があったわね……>
そしてティアラはその過去を懐かしんだ。
わたくしにもそんな頃があったわね……。
かくしてティアラは重ねた唇を思い出す様に自分の親指寄りの手の甲にキスした。
<クエストが有るんだって>
そしてこれはティアラが世界神になるためにアベルにクエストを紹介した時の事。
「ねぇ、アベル。SSSSS邪神級クエストが有るんだって」
……。
当時のわたくしの考えは本当に甘かったです……。
わたくしはユウタのためを思って提案しただけだったのです……。
いえ、わたくしは欲に目がくらんでしまっていたのでしょうね……。
SSSSS邪神級クエストとは要するに邪神認定された世界神を討伐するクエストの事。
<こなしてほしいのかい?>
「今度はそれを僕にこなしてほしいのかい?」
……。
「ええ!そうなの!!してくれるかしら?」
……。
「もちろんだよ、ティアラ」
……。
<メリットが有るのかい?>
「でもそんな大変そうなクエストをこなしてティアラに何かメリットが有るのかい?」
……。
「ええ!それがクリア出来たら私が世界神になれるんですって!」
……。
その時のティアラは野心が旺盛であり、そのクエストの「世界神になれる」という報酬に目が眩んでしまっていた。
「それは良い事だね。ならティアラのために頑張るよ」
……。
「ええ、頑張ってね。ちゅっ♡」
……。
かくしてティアラはアベルにSSSSS邪神級クエストという世界で最高難易度のクエストを与えてしまった。
<今考えたら普通におかしいです……>
そして現在のティアラは再びいつもの様に回想した。
S5ランクの邪神級クエストなんて……今考えたら普通におかしいです……。
世界全体が壊れているという事ですから……。
まさか討伐相手がわたくしの世界の世界神の事だったと知る由も有りませんでした……。
ですがアベルならやってくれると信じていたのです……。
そして彼は見事にやってくれました……。
ですが邪神との戦いで彼の心は壊れてしまったのです……。
かくしてティアラはアベルの心が壊れてしまった時の事を思い出した。
<世界神を倒した直後の事>
そしてこれはアベルが世界神を倒した直後の事。
「このまま死なせてほしい……」
……。
彼は横たわって血反吐を吐いてわたくしがヒールを掛けようとした手を止めました……。
「ダメよ!絶対死なせないわ!」
……。
「ティアラは世界神になったらどんな世界を造りたいのかい?」
……。
「わたくしなら魔法が無く、スキルも無く、種族はヒューマンのみで、ステータスにも制限を掛け、悪が尊ばれない平等で幸せな世界を造るわ」
……。
わたくしはかつてアベルに約束した悪が尊ばれない平等で幸せな世界を造る事が出来たのでしょうか……?
<それは幸せな世界だね……>
「それは幸せな世界だね……」
それ以上無理に喋らないで……。
「今ヒールしてあげるから!」
するとわたくしの手はアベルに止められてしまったわ。
「やめてほしい、ティアラ。僕はもう疲れたんだ」
そんな事を言わないで……。
「どうしましょうプリシラ、彼をこのまま死なせたら彼の名声にまで傷が付いてしまいます……」
神族の寿命は遥かに長いのです。
ですからそのパートナーになる勇者にはメンタルの強さが求められます。
つまり自死を選んでしまう様な勇者とは神は永遠に共にする事が出来ませんのでその様な勇者の魂は降格処分を受けてしまうのです。
それに彼は楽園級の勇者として神々の間で高い人気が有りますし彼の歴史はわたくしの歴史でもあります。
何よりわたくしは彼の名声に泥を塗りたくなかったのです……。
<皆様に相討ちの報告を……>
「私が止めを刺します……ティアラ様は皆様に相討ちの報告を……」
……。
「分かりました……。お願いします……プリシラ……」
わたくしはアベルの願いを聞き入れる事が出来ずプリシラに汚れ仕事を託してしまいました……。
「ごめんなさい……アベル……」
わたくしは最低の女神です……。
<こちらこそごめんね>
「こちらこそごめんね、ティアラ」
彼のこの最後の言葉が今でもわたくしの心に深く突き刺さっています……。
わたくしはあの時どうすれば良かったのでしょうか……。
プリシラに彼の事を託した後わたくしは皆にアベルが邪神と相討ちになった事を報告しました。
わたくしはアベルを失いましたがその後 世界神になる事が出来ました。
しかし本当にそれで良かったのでしょうか……?
かくしてティアラは再び心の傷に触れアベルの事が無性に恋しくなった。
<初めまして>
そしてティアラはアベルの生き写しの様なユウタに会うべくフードを被り隙を見て個人的に地上に赴いてみた。
「あの、初めまして」
ティアラはユウタに話し掛けてみた。
「初めまして。その、ご用件は何でしょうか?」
(見掛けない女性ですね。どちら様でご要件は何なのでしょうか。美しく儚げな未亡人の様にお見受けしましたが)
<心当たりは有りますか?>
「ごめんなさい、人を探していまして……アベルという名の男性に心当たりは有りますか?」
(アベル……聞いた事が有る様な無い様な……しかし人を探しているとは切ないです。生き別れてしまう事などよく有る事ですからね。この女性がまたお探しの男性に会えると良いのですが)
「ん~多分無いと思います。お役に立てず申し訳有りません」
やはり心当たりは有りませんでしたか……ですが少しだけ希望が持てる返答ですね。
<名前は何だと思いますか?>
「そうでしたか……いえ、大丈夫です……それではわたくしの名前は何だと思いますか?よーくわたくしの顔をご覧ください」
ティアラはフードを脱ぎ自分の顔をはっきりとユウタに見せた。
(ん~「ティアラ」という感じがしますね)
「私は『ティアラ』の様な気がしました。この辺りでは珍しい名前だと思いますが」
……!
「今何と!?」
(私は言ってはいけない事でも言ってしまったのでしょうか……)
「『ティアラ』と言いました。申し訳有りません。私はこの手のクイズは不慣れでして」
<間違い有りません……!>
間違い有りません……!
やはりこの方はアベルの魂をお持ちでした……!
この様な所に居たなんて……!
ティアラは思わず泣き出してしまった。
(あちゃ~、女性を泣かせてしまいました。この光景をアン様やニンなどに見られてしまったら大変です……)
「中に入りますか?」
!
しかしこれはお忍びですし……アンに見つかってはいけませんからね……。
かつてアンの様に我儘で短気だったティアラであったがこの世界を作ってから約46億年も経過しており目的の為なら手段も長期的な計画もいとわないという世界神として不足の無い戦略家になっていた。
<お手数をお掛けしてしまいごめんなさい>
「すみません、今日のところは帰ります。お手数をお掛けしてしまいごめんなさい」
ティアラはこくりと頭を下げユウタに謝罪した。
「いえ、大丈夫です。またいつでも来てくださいね。お仕事がしたい場合や国民になりたい場合などいつでも大歓迎ですから」
(来る者拒まずですし誰もが幸せに暮らせる国を造るというのが女神アン様との約束ですから)
「はい、ご親切にありがとうございました」
ティアラはユウタに感謝するとその場を去ろうとした。
「こちらこそご親切にありがとうございました」
わたくしは親切な事を一切しておりませんのに、むしろユウタさんがわたくしに親切にしてくださったのに、わたくしに感謝してくるこの感じは「ティアラ」という名前を言い当てた事からしてもアベルと見て間違い有りませんね……!
創造神様か多元宇宙神様ありがとうございます……!わたくしは生きる気力が湧いてきました……!
かくしてティアラはユウタがアベルだと確信し世界神になって初めて心が救われ洗われた。
後書き
神と人の違いはやはり肉体です。
神は寿命がほぼ永遠(自分が生きたいだけ生きられる)なのに対し人は必ず衰えます。
この違いは体内の魔力量と肉体の魔力効率(魔力回路の密度と連絡具合)によるもので、要するに神クラスの魔力量とその魔力量に耐えられる肉体を獲得しているかいないかの違いです。
では1号や2号、プリシラといった天使はどうなのか?というと寿命は神と同様ですが身体能力に制限が加えられています。
というのもプリシラは魔法の世界の天使なので魔法が使えますが1号や2号は科学の世界の天使であり魔法が使えない人々がいる地上での活動を想定されているので科学の世界神のティアラにより自動的に魔法が封印されています。
ちなみにティアラが作った科学の世界では本人が言っていた通り魔法が存在しない世界なので、正確には「人が魔法を使えない世界」であって神は余裕で使えるのですが、魔法が使えないので魔力を増やす事も出来ず必然的に普通の方法では神になる事は出来ません。
そして勿論神にも天使にも魂が有り輪廻転生する事が可能です。