[R15] 女好きで天才の俺様、異世界を救う (JP) – 1章 1節 2話*(R18カット版) 地球の女神 初夜
「今夜アンを抱いてもいいか?」
俺はアンに今夜Hする許可を取ろうとした。
「ええ♡もちろんいいわよ♡」
アンは俺の目を見つめながらそう言ってくれた。
かくして俺とアンは今夜Hする事となった。
そして俺とアンはHするため別々に体を洗い寝室で落ち合った。
今 俺とアンはベッドを前に横に向かい合って立っている。
「私♡初めてだから!♡」
アンはとても恥ずかしそうにしている。
しかし女神のくせに処女とは。
俺は女神程の長寿な存在がまだ処女だった事が信じられなかったので何でなのか尋ねてみようと思った。
「でもそれって何でなんだ?アンの初めての相手が俺でいいのか?」
疑問なのだ。
俺はただのヒューマンだしな。
まぁ天才ではあるのだが。
「私にも事情があるのよ……。ええ、もちろんいいの。私の初めては裕太にってとっておいてたのよ」
一体どういう事なのだ?
今の内に訊いておくか。
俺の性格的にこういう自分が気になった事は答えを知らないままだといつまでも気になってしまってこれからの事に集中出来ないしな。
俺はタスク達成脳なので大事な事程後回しに出来ないタイプなのだ。
「その事情って?アンは美人だし可愛いし性格も問題無いから相手に困る事は無いはずだが?」
不思議だなぁ。
「昔すっごく奥手な男がいたのよ……。私が選んで信託を下ろした勇者なんだけど……結ばれるなら全部終わってからにしようとか言って全部後回しにして……。しかもその男は私との約束を守る前に死んじゃったのよ……」
何じゃそりゃ。
飛んだマヌケで最低な男がいたもんだな。
てかその文脈だと「守る」じゃなくて「果たす」だと思うのだが。
「そうね、『守る』じゃなくて『果たす』ね」
え!?!?!?!?!?
――いや、いい。偶然かもしれないしな。
「さっきアンが言ってた『アン』って名前を付けてくれた人の事か?――ずいぶんと奥手な男がいたもんだな。しかもアンとの約束も果たさずに死んじまうなんてな、酷い話だ」
今俺は果たせない事を絶対に約束しちゃいけないなぁ、と強く思った。
まぁ約束した時は実現出来ると思っていたのかもしれないが。
しかし酷い話だな。
――4300年以上も前の事と言ってたっけか。
いや、俺が世界史で学んだ時の知識で言えば5000年以上も前の事なんじゃないのか?
まぁいずれにせよそいつはアンに最大で6000年近く迷惑を掛けていたという事なのだろう。
「貴方の事じゃないの!!!」
え……!?!?
「一体どういう事なんだ???」
一人称を俺様にしたい俺の前世魔王説が真実味を帯びてきたって事か?
まぁその6000年近くの間に一体何があったのかは俺にはさっぱりと分からないのだが。
「貴方が死んでしまったのは私のせいなの……当時はロクな国家が無かったから、貴方に国を造ってもらったのよ。当時の貴方も頭脳と武力の腕と口の上手さと人柄で奴隷から王の座まで成り上がったの」
へぇ、前世の俺も頑張ったんだなぁ。
てか言い方!!!
「口の上手さ」って何だよ!
――少なくとも口の上手さなんて今のところ使っていないと思うのだが……!!
まぁ確かに口八丁でその場を収めた事はあるにはあるのだが……。
裕太は脳内で自分の過去の言動を「口の上手さ」で検索してみたが思い当たる節があるにはあった。
「交渉術の事ね」
え!?!?!?!?!?
――そ、そうか……アンは悩ましそうにしている俺を見てわざわざ言い直してくれたんだな……。
いや、それでもおかしくないか……???
「んで当時の私は悪人を見分ける目が無かったわ……。だからそんな私は当時貴方が警戒していた人と仲良くするように言っちゃって……晩餐会で貴方に毒入りの果実酒を飲ませちゃったのよ……」
うわ、俺が死んだのはお前のせいじゃねーか!!!!!!!!
「だって私女神だから……毒くらい平気なんだもの……でも人間の貴方には致命的だったって訳よ……ちょっと苦いかな?とは思ったけど……当時の未熟だった製法じゃ苦くなったりするのも普通の事だったし……全然疑ってなくて気づかなかったのよ……」
はぁ……。
「当時の俺はそいつが怪しいって事に気づいていたが、お前が美味しいわよ!貴方も飲んでみて!!!とか言って毒入りの果実酒を俺に勧めちまって、お前の事を愛していた当時の俺は断る事が出来ずにそれを飲んじまって、お前との約束を果たせずに死んじまったって事か……????」
人間関係により俺が損な事をする羽目になったっていう、俺が嫌いなパターンで死んじまったって事か……。
まぁ人間ではない女神を「人間関係」に当てはめて考えていいのかは大いに疑問なのだが、便宜上「人間関係」と言って差し支えないだろう。
それに裕太は気分的にアンの事を「お前呼び」にしてしまっていた。
「そうなのよぉ……!!!!」
アンが号泣しだしてしまった。
「泣くな、アン。お前のせいじゃないぞ」
いや、戦犯は確実にアンだけどな。
まぁ、今の俺なら女神の毒耐性くらい把握してて確実に相手に先に飲ませてから判断していたんだが。
いや、そういう発想がそもそも前世の経験の影響を受けているって事か?
「でも貴方は私のせいで死んじゃって……私の事ももう忘れちゃってるじゃない……」
んー。
「俺とアンがさっき初めて会って自己紹介し合った時、『でもどうして裕太さんは私が女神って分かっても驚かないの???』みたいな事を言ってただろう?」
裕太は自己紹介の時の事を根拠として挙げようとした。
「うん……」
アンは意気消沈しながらも裕太の話に耳を傾けている。
「俺は神はいるとは思っていたんだぞ?それも何となく女性だとは思っていた。上手くは言い表せないが、アンの事は見覚えがあるっていうか、そんな夢を見た事があるような無いような、みたいな感覚かなぁ」
アンは「謎のお姉さん」って感じもするのだが、それはまぁ今はいい。
「何よそれ……」
魂の授業の内容が右から左だったアンはその奇跡の事も完全に忘れており信じられなかった。
「だから妙に『アン』には聞き覚えがあるんだ。赤毛のアンとかじゃなくて」
裕太はアンに笑ってほしくて少し笑える小ネタを仕込んでみたのだが――。
「どういう事なのよ……」
それに気づいてすらいなかったアンにはビクともしなかった。
そもそもアンは自分以外の「アン」を名乗る女が嫌いだった。
「あ、俺が転生してからまた会ってくれたら良かったんじゃないか?」
4300年だか6000年だかの期間があったのだろうに。
「それが出来なかったのよ……詳しい事は言えないんだけど……」
言えないんかい!!!
「じゃあその|後《あと》俺の魂はどうなったんだ?」
その後の俺の魂の行方が気になるなぁ。
「多分他の星に……」
そしたらこの世界って魔法が使えないんだから俺の前世魔王説は無理筋だなぁ……。
「他の世界で使われたって線はあり得るのか?」
これはすっごく大事な質問だ。
つっかえてる何かが解けそうなのだ。
「ある……」
そうかぁ。
「当時の俺って好色で俺様だったか?」
俺はアンに核心を尋ねた。
「言ったじゃない……奥手だったって……」
*(奥手なのは貴方も同じじゃない)*
これはつまり俺はアンとの事がきっかけで積極的になり、魔法が使える世界で「俺様」になり、それが似合う本当に魔王だかの存在だったかもしれないって事か?
んー、そう考えたらなんだか元気が出てきたぞ!!!
「アン、僕はまたアンに会えて嬉しいよ。僕のために初めてを取っておいてくれてありがとうね。約束を果たすのが遅れてしまってごめん。アンが初めてなのは大丈夫だよ。優しくするからね」
俺はアンを優しく抱き締めた。
そして何でか分からないが俺が「俺キャラ」から「僕キャラ」になってしまっていた。
(あぁ……あの時の裕太さん……!!!――ママありがとう!!!!)
*(見て体験するならわたくしが好きな方でしたいですからね♡)*
「今世では必ずアンを幸せにすると誓うよ。僕にこれからアンとの結ばれる約束を果たさせてほしい。いいかい?アン」
俺はアンに尋ねた。
「ええ♡お願い……!!!♡♡♡」
アンは涙を止め目元の涙を指で拭い笑顔になってくれた。
「じゃあ続きをしようか、アン。――脱いでほしい。それとも僕が脱がせてあげようか?」
俺はアンの裸が見たい。
「ふふ♡ええ♡続きをしましょう♡――ふふ♡自分で脱いであげるわね♡」
アンはそう言って恥じらいながらも自ら裸になっていった。
―R18カット―
(この量の血を見たら、私いっぱい頑張ったわね!♡――この私の血の付いたシーツは私の友達の世界では……ふふ♡何としてでもこのシーツを裕太から貰わなくちゃいけないわ!!!♡♡♡自然な会話を心掛けるのよ!アン!!ファイト!!!)
そして俺はアンからどこか棒読みで大根な演技のように焦ったように話し掛けられた。
「ねぇ!♡裕太!!♡♡シーツに血がいっぱい付いちゃってるわよ!!!♡♡♡ごめん……!!!!♡♡♡♡」
アンにそう言われて確認してみるとそこには確かに血がたくさん付いていた。
まぁそんな事になっているのだろうと思っていたし薄々気付いてもいたのだが。
そして血どころか精―R18カット―やら愛―R18カット―やら多分汗と思われるものまでたくさん付着していた。
「仕方が無いだろう。まぁ洗濯するんだから気にするな」
この時の俺は既に俺キャラに戻っていた。
まぁ洗濯で落とせなければ交換だな。
「私が弁償するわよ!!♡♡いくら???♡♡♡」
いや無理するなって。
「これは最高級のエジプト超長綿100%でドバイの世界唯一の7つ星ホテルのスイートルームで使われているやつと同じやつだからなぁ。1枚4万5000円ってところだな」
結構するだろう。
「これ1枚で4万5000円もするの!?!?!?」
そうなんです。
「そうなんだぞ。だから気にするな。アンはもう俺の女なんだからこれくらい俺が余裕でどうにかしてやるさ」
アンが俺に結構な額のお小遣いをねだりだしたり、お金を湯水のように使って贅沢をし始めたらさすがに怒るかもしれないが。
「ふふ♡――ねぇ!ユウタったら!!私そんな事しないわよ!!!……分からないけど……!!!」
分からないんかい!!!!
「ねぇそんな事より……♡弁償はしてあげられないけどこれもしよければ私が貰ってあげるわよ?♡」
そんな事よりって……。
まぁどうぞ……。
「いいぞ。くれてやる」
むしろこの場面で断る奴なんているのか?
「やったわ!!♡♡もう裕太が返してって言っても絶対に返してあげないんだからね???♡♡♡」
しかしそんな血が付いてるシーツなんて貰って何がしたいんだアンは。
かくして血の付いたシーツはアンが俺から貰い受ける事となった。
―R18カット―
そして俺はアンに腕枕をしてあげてピロートークを始めた。
「当時の俺の性格ってどんな感じだったんだ?」
気になったので当然訊いてみる。
「イタリアの時の一人称が『僕』のアベルみたいな感じ♡」
あぁあんな感じか。
てか何で知ってるんだ!?!?!?!?
「さっきまでどういう訳か俺がアベルみたいになっちゃってたけど良いのか?」
俺は何でか内なるアベルが出てきてしまっていたのだ。
「良いのよ♡昔の裕太を思い出せてすっごく良かったわ!!!♡♡♡」
俺はアンの「『一人称は俺で!』というリクエストに違反してしまった……」と内心で焦っていたのだ。
まぁアンがそう言うのなら良かったが。
*(良かったわね、アン)*
「ちなみに俺が死んだ後その王国はどうなったんだ?」
俺の死後について気になったので尋ねてみた。
「気になるのね♡――う~んとね~――忘れたわ♡」
ええーーーー!?!?!?!?
「だって裕太が死んじゃってから興味が無くなっちゃったんだもの!♡」
いやいやいや、それは女神としてまずくないか???
「でもクーデターを起こそうとした奴らはちゃんと始末したわよ???」
アンが俺の胸元を指先で撫でてから、怖い感じでボソボソっと言った後、安堵した様子で話してくれた。
こ、怖い……。
やっぱり女神だとかそういう存在を敵に回したら怖いな……。
「そうよ♡怖いわよ?♡ふふ♡」
えー、じゃあどうしよう。
アンは浮気とか一切許さないタイプって事なんじゃないか。
そしたら俺なんかもうとっくに……。
「あ、私の星の子達と戯れてる分にはいいのよ。――私の星の子達と戯れている分には」
アンが言った事の後半部分に凄く深い意味を感じたがそれ以上の事はよく分からなかった。
へー、でも何でだ?
「そりゃ私の星の子達は可愛いからよ!――裕太が星の子達と結ばれてる分には全然いいの!!――本当は全然良くないけど!!!――ま、本命の私が出てくるまでの前座よ前座!!!!」
ど、どっちなんだ……。
ま、まぁ、そ、そうか……。
いずれにせよ俺に天罰は無いようでほっとした。
「ふふ♡ところでねぇ?裕太♡――自分の名前は誰が付けたと思う?♡」
急にどうしたんだ。
ん~、普通に考えたら俺の両親だと思うんだがなぁ。
「ふ~ん、知らないのね!――私だったら高校生クイズ君な裕太が知らない事をいっぱい知ってるわよ???」
高校生クイズかぁ……アンは俺が高校生クイズに出たかったのを知っているのか。
――ちなみに俺は出たかったが出なかった。
というのも俺はあの手の芸能事務所にも所属していない素人を地上波で晒す系は苦手なのだ。
それも高校生達を地上波で晒し理不尽な問題を出題するというのはいかがなものかと当時思ってしまったのだ。
CMだって流すだろうしビジネスの道具にしているのにギャラも無いんだろうからな。
何よりデジタルタトゥーになってしまうと思ったからだ。
それに俺は既にビジネスを始めていたし高校生社長だとか、数学オリンピックの件もそうだしちやほやと持て囃されるのは嫌だったからな。
――そもそも顔出しするというのはデメリットが多いし、顔出ししないでお金を稼げるに越したことはないのだ。
この社会では顔出しした時点で一般人でも実質公人扱いになってしまう。
いざ裁判になっても「貴方は自ら顔出ししましたよね?」というようになり裁判官は守ってくれないのだ。
それに俺には既にハーレムがあったので、俺が悪目立ちしたら色々と詮索されて周囲の女性達に迷惑が掛かってしまうだろうからな。
そんな訳で俺は出場しなかったしその決断は今でも後悔していない。
「私も裕太には人前に出ないでほしいわ!!」
ん、それは何でだ?
「人前に出るデメリットが心配なのもあるわ!――でも何より私は裕太を独り占めしたいから!!!」
はい、完全に自分本位な理由でした。
「それより裕太の名前の由来 知りたくないの!?!?」
もちろん知りたいが。
「裕太の名前はね、私が付けてあげたのよ!!!!」
お、マジか。
「驚いた???」
まぁな。
「裕太が私の名前を付けてくれたけど、交換で私も裕太に名前を付けてあげたのよ!!!――だって貴方には名前が無かったんだもの!!!」
まぁ数千年前の事だもんな。
文明レベルも低くて争いも酷くて色々と相当酷かったのだろう。
「そうね、でも最初は酷くなかったのよ???」
人口が少なかったからか?
「そう!!集落が基本だったから問題も起きづらかったのよ!!」
そうだよなぁ。
で、人口が増えてきて都市や国家へと発展していく過程で問題が起こり始めたと?
「そうね、人権だって確立されていない時代だもの。――支配者以外は奴隷の時代よ」
この現代の価値観に染まり切っている今の俺からすれば考えられない話だ。
「でも貴方が奴隷解放を進めてくれたおかげで少しずつ変わっていったのよ!」
へー、当時の俺も役に立ったんだなぁ。
しかし俺は完全にタダ働きさせられてるよなぁ……。
「そうね、あの時も無料で引き受けてくれたわ」
ヤバ……自分の行いを他人視点で冷静に見てみたら自己犠牲し過ぎていて気持ちが悪過ぎる。
「自分の事そんな風に言わないでよ!!!!!」
へい……。
まぁ何となくなのだが、きっとその頃の俺の口文句は「僕は君の役に立てて嬉しいんだ。それに僕は君から一生大切にしたい名前を貰っているからタダではないし、僕は何より大切にしたい君自身と一緒にいられている事が最大の贈り物なんだよ。――だから僕はそれ以上に望む事も無いし幸せだから気にしないで」とかなのだろう。
「そう!!!!!♡♡♡♡♡全く同じよ!!!!!!!!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
胸が高鳴りまくったアンはその衝動を抑えられずに俺に襲い掛かるように抱き着きディープキスしてきた。
しかしすまない。
俺は自己犠牲してしまう性格を変えたいと思っているので前世の俺の言動を猛烈に反省しているのだ。
「変えなくていいんじゃない?」
いや、変えたいなぁ。
自分だけ損な立ち回りをしていたらバカらしいだろう。
「私はそれでもいいと思うんだけどね!!!!」
まぁアン目線はそうなのかもしれないけどな。
しかし今の俺だったら何て言うかなぁ。
――俺様全開なら「俺がこの世界で一番欲しいのはお前の身と心だけだからな。既に十二分の対価は貰っている。口を開く暇があったら俺に口を塞がせろ」って甘くキスしちゃうか……。
しかしこれってどう考えても魔王なんだよなぁ……。
しかも「対価」って悪魔やんけ……。
悪魔族出身の魔王ってか?
――はぁ……俺が漢気を出そうとすると出てくる俺様キャラが魔王回帰によるものだったのだとしたらちょっと落ち込むなぁ……。
てかちょっとどころかかなり落ち込むなぁ……。
というのもこの文明では相手を罵る言葉に「この悪魔!!!」というのがあるしイメージは最悪なのだ。
それに魔王といったら勇者と敵対する悪役キャラだからなぁ……。
悪の側に回るのは全く受け入れられない自分がいる。
「魔王な裕太もいいんじゃない???♡♡♡」
魔王はそもそも魔族第一主義で他種族の領地を侵略し支配下に置こうとするものだろう?
――戦争には戦争犯罪が付き物だしな。
そしてもし俺の前世が魔王だったのだとしたら、俺だってそういう魔王らしい悪逆非道な事をしていたかもしれないのだ。
つまり俺がこの手で人を殺めていたのかもしれないと思うと……。
俺は自分の手を見つめながらその事を考えているとその手が震えてきた。
「大丈夫よ!裕太ならきっと優しい魔王だったはず!!――さっきみたいに『俺がこの世界で一番欲しいのはお前の身と心だけだからな。既に十二分の対価は貰っている。口を開く暇があったら俺に口を塞がせろ』なんて言っちゃうような魔王様よ???――だから大丈夫よ!!!!」
アンがさっきの俺のセリフを俺の声真似をしながら言ってきた。
励まされたのとからかわれたようで落ち込んだのが半々ってところだ。
俺はどうも自分がからかわれるのは好きではないようだ。
まぁでもそうだよな。
俺が魔王になったとしても悪い存在になるのは考え辛い。
そして俺は魔王だったかもしれない前世に少しだけ希望を見出すことが出来てきた。
まぁそもそも俺の前世が魔王だったと確定した訳でもないしな!!!
「そうよ!!♡♡元気出して!!!♡♡♡チュッ♡チュッ♡」
俺はアンにキスされ元気も出てきた。
そんな訳で本題に戻そうと思う。
「で、名前の件はどうなったんだ?――何で裕太にしたのかとかな」
元々の文字はおそらくアルファベットだろう。
という事はカタカナで言えば「ユウタ」だと思うのだ。
「そうよ!『ユウタ』や『ユータ』が正解ね!!」
へー、でも何でそれが俺の名前の由来になったんだ?
「私当時文字を人類に与えようと思ったのよ!で、ギリシャ文字なんだけど『アルファベット』はどうかな?と思ってね。で、初期は「エータ、ベータ、シータ、データ、イータ、フータ、ギータ、ヘータ、アータ、ジータ、ケータ、レータ、メータ、ネータ、オータ、ペータ、クータ、ラータ、セータ、テータ、ウータ、ヴータ、バータ、スータ、ユータ、ザータ」とか考えていたのよ!」
へー、ベータとシータとイータとゼータは残ってるじゃないか。
「ええ、一部は残ったわね!」
あと使われなくなったけどヘータもあったな。
「そう、ヘータもあったわよ!!とっくに廃れてしまったけど!!!!」
しかしそれ一辺倒なのもキツくないか?
「昔の裕太もそう言っていたから人々に託して自由にさせたのよ!」
なるほどねぇ。
で、俺の名前にユウタをくれたのは何でだ?
それにユウタも使われてはいないようだが。
アルファベットの「Y」にあたる文字の読みは「ユプシロン」のはずだ。
「じゃあここでクイズよ!!男にはあって女には無いもの、な~んだ???」
唐突にアンによる名前の由来クイズが始まってしまった。
ん~、解くなら一発で解きたいなぁ。
というのも俺は高校生クイズに出ようか考えていた程クイズが好きだからな。
俺がクイズ好きなのも知っていてこの意地悪な女神様はクイズを出してきたのだろう。
「天才様の裕太でもさすがにヒント無しは難し過ぎた???♡♡♡」
アンの煽り文句にちょっとだけイラっときてしまった。
こうなったら意地でもノーヒントで解いてやる!!!
俺のIQは180を超えているのだ。
天才の名に懸けて、それに何より俺を信じて勇者にしてくれたアンの期待を裏切らないためにも俺はこのクイズに絶対に負けられない。
とりあえず現状の情報を整理をすると、俺が問われているのは「男にはあって女には無いもの」だ。
そしてそれはアンが俺に名付けてくれた「ユータ」と関係があるという事だ。
以上の情報を派生させると、「男にはあって女には無いもの」だし何となく実体があるものかもしれない。
そしてアンは女性で俺は男性だ。
男性と女性の違いといったら顕著なのは肉体だし、いくらアンでも無形の哲学に逃げる程陰湿ではないだろうし、普通に生物学的な問いと見て良いだろう。
「私は陰湿じゃないわよ!!!!」
うん、そうだね。
まぁそれ以上は言及しないでおく。
「ちょっと!!!!」
さらに「ユータ」の文字は大文字が「Y」で小文字が「y」だ。
つまり以上の事から導き出そうとすると、脳内のデータベースに1つだけヒットしたものがあった。
それはY染色体だ。
「そう!!正解!!!さっすが私が見込んだ勇者よ!!!!♡♡♡♡チュッ♡」
どうやら正解したらしい。
アンは俺にそう言ってキスしてきた。
そもそも染色体とはヒトの細胞の核内にあり、遺伝子が含まれている構造体の事だ。
性染色体は性別の決定に関わる情報を持つ染色体の事で、ヒトの場合X染色体とY染色体の2種類がある。
そして女性の性染色体はXXであり、男性の性染色体はXYなので、「男にはあって女には無いもの」とは、性染色体という点で見れば「Y染色体」だと言えるのだ。
「そうなのよ!!!!」
てかおバカそうなアンがよくそんな事を思い付いたな。
「ちょっと!!!!!――私だってお金の事とか興味のある授業はちゃんと聞いてたわよ!!!!!!」
アンの話を聞いた限りどうやらそこかに神専用の学校がありそこで一通りの事は学べるようだ。
「まぁね!!!!」
で、アンはお金と男性に興味があったと?
「だ、だって!!私は女性だから男性の体の事が気になっちゃったんだもの!!!!――あと正確にはお金じゃなくて金目の物ね!!!!!」
そっか。
まぁ興味を持つ事は良い事なんじゃないか?
――裕太はいつまでも脱線していては埒が明かないためアンを褒める事にしたのだ。
「ありがとう♡チュッ♡――でね、昔の裕太はね、私が体中に性染色体があるって教えたら「どこにあるの!?見えないよ!?」ってすっごく驚いてたの。――物凄く小っちゃいんだから肉眼で見える訳無いのにね、クスクスクス」
あの、未開人を虐めないでもらえます???
「別にいじめてなんかないわよ!!!可愛いと思ってただけ!!!!!」
どうだか。
「でね、裕太が私の事守ってくれるって言ってくれたのが嬉しくてね、男らしい、って思ったの!!で、Xの隣はYだし、Yは私の中では「ユウタ」だから、ふと名前は「ユウタ」はどう?って思ったって訳!!!」
なるほどねぇ。
「ち・な・み・に!『ユウタ』を『ユプシロン』に変えたのは私よ!!!」
んー、でも何で変える必要があったんだ?
「もちろん裕太の名前を私が独り占めしたかったからよ!!!!――知らん連中にユウタユウタ言われたら嫌でしょ!!!!!!」
そ、そうですか……。
で、「ユウタ」と「ユータ」はどっちが正解なんだ?
「発音で言えば『ユウタ』よ!」
なら良かった。
俺は「ユータ」より「ユウタ」の方が好きだしな。
ありがとな、アン。
「どういたしまして♡チュッ♡――当時の裕太もすっごく喜んでくれたわよ!!!♡♡♡」
そうか。
しかし当時の俺とアンの関係は未開人と全てを知っている女神という関係で、俺はアンに超見下されていたのだろうと思うと全然元気が出てこない。
「見下してなんかないわよ!!!もう、元気出して!!!裕太が元気出してくれるまでチューやめてあげないんだから!!!!!」
アンはそう言うと俺にたくさんキスしてきた。
――どうやら俺はチョロいようだ。
アンのキスで元気を取り戻した。
「ふふ♡私だって裕太がキスしてくれたらチョロいわよ?♡」
そうなのか……。
今度それが必要になったら試してみるとしよう。
「今してほしいけど……まぁそうなったら試してみてね♡」
うむ。
で、どうやって現代の俺にもその名前を付けたんだ?
「そりゃもう、念じたのよ!!裕太の両親に!!!」
こ、怖っ……。
「あと天使達も総動員して誘導したのよ!!!」
そこまでする必要はあったのかなぁ……。
「別にいいじゃない!!!私は裕太に変な名前を付けられるのが嫌だったのよ!!!!!」
まぁそれで結果的には良かったかな。
俺もこの名前は気に入っているのだ。
それに俺はアンがくれた名前を大切にしたいしな。
「裕太!!!♡♡♡大好きよ!!!!♡♡♡♡チュ~~ッ!!!!♡♡♡♡」
アンがキスしてきたが――。
「俺も大好きだぞ、アン」
俺もそう言ってそれに応じた。
そして思い出した。
俺はアンにしてあげたい事があるんだったな。
それをアンへのお礼としよう。
「そのお礼にアンにこれをしてあげるぞ」
ピロートークも終えたところで、俺はアンにお仕置きを執行しようと電動マッサージ機を取り出した。
「ちょ、そ、それは電動マッサージ機じゃないの!!――一体それのどこがお礼なのよ!!!!!」
アンが俺が取り出してきた電動マッサージ機を見て驚き慌てている。
アンも薄々気付いたようだが、女神がそれを知っているのも罪深いんじゃないか?
――ま、それもお仕置きに加算してやるとするか。
「これは俺の思考を覗いてたお仕置きでもある。――ちなみにこれはさっきアンが『あ、でも今は燃え尽き症候群なんだっけ?』って言ってきた時にしようと思ったんだぞ」
俺はアンにこのお仕置きをしようと思ったきっかけを教えてあげた。
「やぁああああおかしくなっちゃううううう!!!!!♡♡♡♡♡」
俺は事後で敏感になっているアンの―R18カット―に電動マッサージ機、通称「電マ」を押し当てるお仕置きを執行し―R18カット―させた。
かくして俺とアンの初夜は幕を閉じた。
後書き
本作はこのようにHシーンも丁寧に書きます!
なぜなら「逃げずに全てをきちんと描写すべき」という信念があるからです!