[R15] 優しく俺様系で女が好きな天才新社会人、異世界を救う (JP) – 1章 2節 19話 地球の女神 – 仮面職人の女神 (アンの視点)
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青年男性向け – ソフト – R15
第2節 異世界の女神 (第1章 勇者の村)
第 19 / 28 話
約 8,800 字 – 13 場面 (各平均 約 670 字)
1/13.「どうぞ入ってください……」
初めての魂交換を終えたアンとマナリスはレイナに会いに来た。
「どうぞ入ってください……」
アン達はアポは既に取っておりレイナは申し訳無さそうな顔でそう言った。
「ええ……」
アンはそう言ってレイナの家に入っていこうとし――。
「はい……」
マナリスもアンが辛そうにしているため自分も辛くなり切ない表情でアンの後からレイナの家に入った。
「どうぞお掛けになってください……」
アンとマナリスはレイナに応接室へと案内され着席を促された。
「ええ……」
そしてアンは素直に指示に従って座り――。
「はい……」
――マナリスもアンに続いて座った。
「どうぞ……」
そしてレイナの天使が紅茶と茶菓子を配膳した。
「ええ……」
ユウタはレイナにより飲み物で毒殺されたのでついそれを思い出してしまった。
「はい……」
レイナの天使は配膳が終わると退室していったが全員が気まずくなっていた。
2/13.「『』は入っていませんよ……」
そしてしばらく誰もお出し物に手を付けられずにいたのだが――。
「毒は入っていませんよ……私が証明します……」
――レイナが沈黙を破り自分が先に飲んで食べる事で毒が入っていない事を証明した。
「そう……」
アンは食の欲求に耐えられず紅茶を飲みお菓子に手を付けた。
「それではわたくしも……」
マナリスもアンに続いて紅茶を一口すすりお菓子を一口食べた。
(私に信用は無いですよね……)
レイナは自分に信用が無い事も相手が警戒している事も分かっているしでも自業自得とはいえショックで傷付いている。
「アンさん今日も謝罪します……ごめんなさい……」
レイナは深く頭を下げて謝罪した。
――レイナはアンの成年パーティーの際はアンの勇者を殺し勇者を失ったアンに実力という名の醜態(しゅうたい)を晒(さら)させたいと考えていたのだがアンの勇者を殺し名誉を大変傷付けた後(あと)はその時に抱(いだ)いていた怒りも嫉妬心も消え去り思わぬ大金を手に入れ逮捕され憧れの対象だった世界神ティアラにも悪事がバレ諭(さと)された事で自分の過ちに気付かされていた。
「じゃあ私達を手伝いなさいよ……あとこっちは私の友達で魔法の世界の女神マナリス……」
アンはレイナに早速要件を言いつつマナリスを紹介した。
(手伝い……それにアンは友達が出来てたんですね……)
レイナはアン達が何を手伝ってほしいのだろうかと思ったがそれよりもアンに友達がいた事に衝撃を受けアンの成長を実感した。
(あ、やっとわたくしの事を紹介してくださいました……)
「はい。お初にお目に掛かります。アンからご紹介に預かりました世界神カトラス様の魔法の世界から参りました女神マナリスと申します。宜しくお願い申し上げます」
マナリスはいつもの様に丁寧に自己紹介した。
3/13.「で、『』とは何ですか?」
「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそお初にお目に掛かります。科学の世界のレイナと申します。宜しくお願い申し上げます。そしてアンの勇者を毒殺し誘拐し不正取引をした重罪犯です……で、手伝いとは何ですか?」
レイナも丁寧にそして直近の犯罪歴まで自己紹介し要件について訊いた。
*ちなみにレイナはアンの学生時代の成績優秀な学級委員長だっただけの事は有り世界神ティアラ主催のパーティーの際は未来の事を見据(みす)え来客者の地位や顔を含めた姿、名前を出来る限り覚えていてもちろんカトラスとやってきたマナリスの事も有望株と思い顔と姿は把握していたがじろじろと見ているとカトラスと目が合ってしまい怖くて声掛けまでは出来なかった。*
「す、すっごい自己紹介ね……」
アンはレイナが犯罪歴まで自己紹介した為驚き苦笑(にがわら)いした。
「マナリスさんが私の事を善人だと誤解してしまう前に話しておこうと思ったんです」
レイナなりの配慮(はいりょ)で言ったのだった。
「マナリスはもう知ってるから平気よ」
アンはマナリスにはもうとっくに話していた為今更の事だった。
「はい。存じ上げていますので」
マナリスは神々(かみがみ)のメロドラマで自分が恋したのが親友の勇者で親友が恋したのが自分の勇者でドロドロの展開になったりとある勇者を親友の女神同士が奪い合ってドロドロの展開になったりというのを観た事が有るし目的は違えどアベルの魂を手に入れる為に親友のアンに対して自分がその様な事をしてしまったら……と考えたらとてもレイナを責める気にはなれなかった。
「そうでしたか……で、手伝いとは何ですか?」
レイナは強烈な自己紹介で質問が流されてしまったと感じていてもう一度要件を訊いた。
「あ、そうだったわね!――おっほん。私達は今ユウタを勇者として受け入れる土壌(どじょう)作りで犯罪者とか魔王とかのわっるい魂を集めてるのよ!で、闇市?に行こうと思っててでも私達は行き方も何も知らないからあんたなら知ってると思って訊きに来たのよ!」
アンはレイナに要件を言った。
4/13.「『』は付いているんですか?」
「えっと、そもそも戻ってくる算段は付いているんですか?」
レイナはそもそも論として魂が戻ってくる予定が有るのか訊いた。
「それはママが何とかしてくれるんだって。だから私達はユウタがいつ帰ってきても良い様に準備しておきたいって訳(わけ)!」
アンはその為にも準備したいのだと言ったのだが――。
「え、でもどうしてそれで犯罪者や魔王の魂が必要になるんですか?」
――レイナはアン達がその為に犯罪者や魔王の魂を集める必要性が全く分からなかった。
「いや、だ・か・ら、治安が悪くなってないとユウタが帰ってきてもママに取り上げられちゃうじゃん……!」
アンはレイナって物分かり悪いの?という感じで事情を話した。
「えっと……学校の時に渡された『魂共有協定』やらに同意しちゃってたって事ですか?」
レイナはアンが同意してしまったのではないかと思い訊いた。
「え、何それ?」
アンはレイナが何を言っているのか分からなかった。
「モニターで表示出来ますよ。それで、私はああいうのは裏が有ると思って同意しませんでした。これです」
レイナは説明し協定書を見せた。
「あ、これかな?――でも裏が有るって何の事?」
アンも協定書を表示したがレイナの言う裏が何なのか分からなかった。
「この協定は一見(いっけん)自分が困っている時に勇者を回してもらえる便利な行政サービスに思えますが逆に誰かが困っている時には自分の勇者を提供しなくちゃいけない協定なんですよ?」
レイナはこの助け合いの協定の自分が被(こうむ)り得る部分が気に食わなくて同意していなかったのだった。
*これはもちろんティアラがアベルの魂が科学の世界のいつどこに現れても手に入る様にと考案した協定であり暗殺に失敗した時の為の保険だった。*
*ちなみにティアラが取れる選択肢として協定発動、暗殺誘拐、買取提案の3つが有るのだが買取提案だと「その魂をあの世界神のティアラ様が買いたがっている」とバレ足が付いてしまうし協定発動だとこれまた『政府がその魂を持っていった』とバレ足が付いてしまいかねない為暗殺誘拐で犯人が誰なのかも魂がどこへ渡ってしまったのかも分からない様にしスパッと断(た)ち切りアフターケアでその代わりにと希望の勇者をあてがいイメージアップも図(はか)る方針だった。*
5/13.「『』って思うもんなんじゃないの?」
「それはそうだけどあの時は勇者なんて持ってなかったし助けてもらえるなら良いなぁって思うもんなんじゃないの?」
アンは自分が判断を間違えたとは思っていなかった。
「だからこそですよ。自分の立場が弱い時にこそ転がり込んできた上手い話には裏が有るかもしれないと疑わないといけないんです」
まぁレイナは自力でどうにかなると思っていたし誰かに頼るつもりも無かったから同意しないのは当然だった。
「わたくしは便利だなぁと思いました。うちの世界にはそういうの有りませんので。でもそうですね。良い勇者を持ったとたん提供しなければいけないかもしれないって困りますよね」
マナリスはその協定は便利だなぁと羨ましいなぁと思いつつも難儀(なんぎ)なものだなぁと思った。
*ちなみにカトラスは神々に便利サポートは不要だと考えていて「自力でどうにかしろ」というスタイルであり行政サービスも最小限でアベル探しでは抜き打ちチェックを行いもし見つけた場合はティアラ同様に暗殺誘拐でスパッと断ち切るつもりだった。*
「で、魂はティアラ様が必ず取り戻してくれるとして、てかそもそも何でティアラ様が取り戻してくれるんですか?取り戻す義理は無いですよね?」
レイナはやはり賢く不可解な点に気付いた。
「あ、言われてみればそうかも?」
アンも少しは不可解(ふかかい)に思った。
*神々の世界は基本的には自己責任。*
「しかしどの世界にも捜査当局は有りますからね。取り戻すと約束してくださったのなら慈悲深いティアラ様の事ですから信じても宜しいのでは?」
マナリスはアンがユウタの正体に気付けば自分に貸してくれなくなってしまうかもしれないと思いレイナにアンに余計な事を言わないでほしかった。
「そうよね!ママがそう言ってくれてるんだし!」
アンは深く考えたくなかったしマナリスが最(もっと)もな事を言っていると思った。
「それじゃあ仮に取り戻せたとしてあの魂は闇のオークションで相当の値が付いたと聞きましたしいくら土壌(どじょう)を作ったとしてもティアラ様に協定を発動されてしまうのではないですか?」
レイナはいくら土壌を作ったとしても協定を発動されてしまえば無意味だと思っている。
「そ、それは……」
アンは何も言い返せなかった。
6/13.「『』ならば見逃してくださるはずです」
「おそらくですがアンが所有している勇者は彼だけ。それに暗殺されなければ今も生きていたはずです。慈悲深い世界神ティアラ様ならば見逃してくださるはずです」
マナリスは戦略を練(ね)る為にも科学の世界の規則について調べておりある程度把握していた。
「ほ、ほんと……!?」
アンは希望が見えてきた。
「ティアラ様ならアンがお願いすればきっとそうしてくださいますよ」
マナリスもアンはティアラに気に入られていると思っているしある程度の融通(ゆうづう)は利くのではないかと思っている。
「そうかもしれないですね。で、アンさんの星の治安を悪くさせるんですか?」
レイナはとりあえずそうだとして話を次に進めた。
「え?私の星の訳無いじゃん。マナリスの星よ」
アンは即否定した。
「え、友達の星を汚すのって私が言えた義理ではないですが少々酷いのではないですか?」
レイナはアンのしようとしている事は酷いのではないかと思った。
「ぐぬぬ……だってユウタがティアラに取り戻してあげるけどいずれ持ってくわよって言われてるんだもん……!その前にマナリスの星に移すしか無いじゃん……!」
アンなりに頑張って考えたユウタがティアラに没収されない唯一の方法がこれだった。
「まぁ確かに連れていかれる前に別の世界に渡らせた方がティアラ様といえども手が出しづらいでしょうね」
レイナもそれなら上手くいくのではないかと思った。
「はい。ですから今の内に受け入れ態勢を整えておくのです」
マナリスはやる気で漲(みなぎ)っていた。
7/13.「どうしてそこまで『』するんですか?」
「でもマナリスさんはどうしてそこまでアンさんに協力するんですか?」
レイナはマナリスがアンの為にそこまでする訳が分からなかった。
「そ、それは……友達だからです!」
マナリスはなんとか即興でそれなりの理由が思い付けてほっとした。
もちろんマナリスは「アベル」については言えなかった。
「マナリス……!」
アンは再び感動した。
「でもまぁ地上が大変な事になれば勇者が必要という事で余計な横槍(よこやり)は入らなくなるでしょうね。それにアンさんはもう有名な女神ですからまたいつ狙われるか分からないですしマナリスさんの星に預けるのは良い案だと思います。それに通いやすいでしょうし女神同士で勇者を共有するって事でしょうし良いロンダリングです」
レイナはそれが名案だと思えてきた。
「ロンダリング……?」
アンは専門用語の意味が分からなかった。
「分かりやすく言えば『上書き』です。まぁ、ずっと所有していれば協定が発動されてしまうかもしれないので友達と自分の星を交互に行き来させる事で色々とリセット出来ると思いますから。まぁ私に出来る事なら協力させてください」
レイナはどうごまかそうとティアラの裁量次第な事は重々(じゅうじゅう)分かっているのだが何もしないよりはましだろうしこれ以上ネガティブな事を言ってアンとマナリスが抱(いだ)いている希望を砕(くだ)きたくはなかったし罪滅(つみほろ)ぼしも有って協力を申し出た。
「上書き?の事はよく分からなかったけどそうこなくっちゃ!じゃんじゃん協力するのよ!」
アンはロンダリングの事はよく分からなかったが何よりもレイナの協力を取り付けられて安心した。
「わたくしからもお願い申し上げます」
マナリスもお願いした。
8/13.「あ、『』を上げてください……!」
「あ、頭を上げてください……!私なんかに頭を下げないでください。それでは暗黒街について説明しますが暗黒街とは神々の歓楽街(かんらくがい)で自治領です。その為各世界の法律が適用されない為注意が必要になります。行き方はそこへテレポートしようと思えばテレポート出来るはずです。そして暗黒街はたくさん有りますがお二方(ふたがた)が行きたいのは私達にとって一般的な科学や魔法の世界の共有の暗黒街で宜しいんですよね?」
レイナはマナリスの頭を上げさせると暗黒街についての説明を始め共有認識について訊いた。
「行き方については分かったけど私達が行きたいのは多分そこで合ってるわよ」
アンはレイナが考えている暗黒街と自分達が行きたい暗黒街はレイナの口ぶりからして同じだと思っている。
「なら良いです。で、暗黒街は匿名が基本で入場するには専用の仮面を装着しなければいけません」
レイナは暗黒街のルールについて説明を始めた。
「私暗黒街の仮面なんて持ってないけど……!」
アンは暗黒街の仮面なんて持っていないしどこで買えるかも分からない為焦(あせ)った。
「仮面は仮面職人のお店が有りそこで買えます。またテレポートの際に仮面を持っていない者、装着していない者は自動的に仮面職人のお店にテレポートされる仕組みになっています」
レイナは仮面職人のお店の説明をした。
「へー。で、仮面を買うっていってもお金は?タダで貰える訳じゃないんでしょ?」
アンは気になった事を訊いた。
「はい。お金が掛かります。通貨は金100トンで1ゴールドでエントリークラスのお面はどれも1ゴールドです」
レイナは暗黒街での通貨とお面の値段についてを話した。
「ちょ、ちょっと高くない……?」
貧乏女神のアンには大金だったがレイナからはユウタの売却益の残りや慰謝料までたんまりと貰っているから実は余裕なはずだったのだが自分がちょっとしたお金持ちなのを忘れていた。
9/13.「『』の分は私が払いますから」
「アンさんとマナリスさんの分は私が払いますから」
レイナがアンとマナリスの仮面代を払うつもりだった。
「そ、そう……」
アンはレイナが払ってくれるのなら遠慮無く奢(おご)られたかった。
「わ、わたくしまで……」
マナリスは自分で払うつもりだったし申し訳無い気分だった。
「罪滅ぼしですからどうか出させてください」
レイナはそれだけで罪滅ぼしになるとは思っていないが出来る限りの事はしたかった。
「レイナさん……」
マナリスはレイナの心境(しんきょう)を慮(おもんぱか)った。
「それと両替(りょうがえ)は一度限りですが仮面職人さんが応じてくださいますので初回の両替の心配は有りません。またそこで二つ名の登録も行います」
レイナは両替の心配が無い事も教えた。
「二つ名?」
アンは二つ名が何なのか分からず訊いた。
「本名とは別の通り名(な)の事です。ちなみに私の場合は『賢いリス』です。どういう二つ名にするかは今の内に考えておいた方が良いです」
レイナは二つ名の説明をした。
「『賢いリス』って憎(にく)たらしいわね……!」
アンは嫌味を言った。
「すみません……そして魂が欲しいのなら格安だと魂を扱う露店が集まる露店街や少し値が張りますが商店街に行くと良いです。あと仲介屋を使うという手も有ります。手数料が掛かりますが色々と相談に乗ってくれて商品を探してきてくれるんですよ」
レイナは魂を扱う露店街や商店街が有る事や仲介屋を利用するのが便利な事も教えた。
「分かったわ!じゃあ早速行くわよ!」
アンは早速(さっそく)行きたかった。
「行きましょう!」
マナリスも早速行きたかった。
「い、行きましょう……」
レイナは予定が有ったのだが罪悪感から断る事が出来ず予定をキャンセルして暗黒街へ行く事にした。
かくしてアン達は暗黒街へとテレポートした。
10/13.「『』にようこそ!」
そしてテレポートすると――。
「よおガキンチョ共。エルダの仮面屋にようこそ!」
――店主に挨拶された。
「ガ、ガキンチョって……!」
アンはもう立派な大人だと思っているし子供扱いされるのが大嫌いだった。
「ここは神々の暗黒街。入場するには仮面が必須だよ。てな訳で店の中から好きな仮面を選びな。お金は金100トンで1ゴールドさね。あと買う時に二つ名の登録が必要だよ」
エルダはいつもの様に簡易的に説明した。
「わ、分かってるわよ……!マナリス!レイナ!選ぶわよ!」
アンは早速仮面を選んでいこうとした。
「はい!」
マナリスも早速選んでいこうとした。
「私はもう持ってるから……」
レイナは仮面を2つも買いたくはなかった。
かくしてアンとマナリスはきゃっきゃうふふで楽しく仮面を選んだ。
11/13.「『』を選んだようだな」
「よおしガキンチョ共、仮面を選んだようだな」
エルダは仮面を選び終えたアン達に声を掛けた。
「あの、少なくともわ・た・し、はガキンチョじゃなくてもう オ・ト・ナ なんだけど?」
アンはさすがに訂正(ていせい)を始めた。
「暗黒街に初めて来る奴らなんざあたしからしたらみんなガキンチョなんだよ」
エルダは正論をぶっ放した。
「ぐぬぬ……でもあたしは『最優秀新人女神賞』を受賞したのよ?」
アンは負けず嫌いの為食って掛かっていった。
「あ、もしや勇者を死なせた間抜(まぬ)けな女神ってお前の事だったのか……?」
エルダは暗黒街の住人の為情報も入ってきやすく知っていた。
「そ、そうだけど……」
アンはもうぐうの音(ね)も出なかった。
「まぁしょうがねぇさ。お前の勇者は狙われてたし時間の問題だったぜ。で、お会計はもうそこのマセガキンチョが払ってるから心配すんな。で、今度は二つ名の登録だな」
エルダはアンを励(はげ)ましつつお会計が済んでいる事と今度は二つ名の登録が必要な事を教えた。
「私の二つ名は『働き者』よ……!」
アンは仮面選びの時に二つ名を考えながら仮面を選んでいて『働き者』という二つ名に合った働き者っぽい鍛冶道具やペンといった仕事道具が描(えが)かれている仮面を選んでいたのだった。
「はいよ。まぁ『有能な』働き者になるんだぞ……」
エルダは手続きをしながら突っ込みを入れた。
「うっさいわね……!」
アンはシンプルに怒った。
12/13.「で、お前は?」
「で、お前は?」
エルダは今度はマナリスに訊いた。
「わたくしは『楽園の夫人』にします」
マナリスはお花畑の様なデザインの仮面を選んでおりアベルを意識して『楽園の夫人』という二つ名にした。
「は~ん。お前はもしや『ア』から始まる奴に合わせてんのか?」
エルダはマナリスは貴族達だけが噂している事を知っているのではないかと思った。
「はい。よくご存じですね」
マナリスは素直に明かした。
またレイナに見られたが「真意は秘密ですよ?」という感じで微笑(ほほえ)み返しておいた。
「『ア』から始まる奴って何の事?」
アンは何の話をしているのかと思い訊いた。
「わたくしが大好きなとある勇者の事です」
マナリスは名前は出さずに明かした。
「へー、そう!」
アンはマナリスが誰の事を言っているのかは分からなかったがマナリスの事を友達として大事に思っているし遠慮して深く追求(ついきゅう)しようとは思わなかった。
13/13.「……じゃあ早速行きましょうか」
「……じゃあ早速行きましょうか」
レイナはユウタの正体に仲介屋のクレトの言っていた事などを鑑(かんが)みておそらく「アベル」の事なのだろうと察していてそのアベルが何と呼ばれているのかも知っていてマナリスが二つ名を『楽園の夫人』とした事からもマナリスもおそらく気付いているばかりかその妻の座を狙っていてある意味アンへの「宣戦布告」だと見抜いたしマナリスのアンへの微笑み具合から鑑(かんが)みてもアンと無理矢理争うとは考えられず竿(さお)姉妹になろうとすら思っているのではないかと見抜いていたが二人がせっかく仲が良い為邪魔したくなかったし余計な事は言わずにさっさと暗黒街に繰(く)り出そうとした。
「あとあたしの店では修理も出来るし買わせたい連れがいる時にもまた来ると良いよ」
手続きを終えていたエルダはアフターサービスの説明もした。
「ありがとう!エルダお姉さん!」
気に入った仮面に出逢いそれもタダで買えたアンは上機嫌でありエルダに元気に感謝した。
「エルサさん、きっとまた来ます。ありがとうございました!」
(アベル様もといユウタ様との間に子供を儲けたらまた来ます♡)
マナリスもお気に入りの仮面に出逢えて上機嫌だった。
「はいよ!また来なよ!ガキンチョ共!」
(お姉さんって呼ばれるのも悪くないねぇ!)
エルダは「お姉さん」と呼ばれた事が嬉しかった。
やったわ!タダで買えるなんて最高よ!まぁまだレイナの事は許してあげないけど!
アンはレイナからむしり取る気満々(まんまん)なのだった。
かくしてアンとマナリスは暗黒街の「エルダの仮面屋」の店主にして仮面職人であるエルダから仮面を購入した。
後書き
仮面のエントリークラスは金100トンを1ゴールドでお値段1ゴールドと一見(いっけん)儲からない様に思えますが実は仮面ビジネスは結構儲かります。
というのも新規は必ず仮面屋にバランス良く配分されてやってきますし仮面を作ったら後(あと)は魔法効果を付与するだけですからね。
まぁその付与が大変なのですが神からすれば神クラスの魔法効果を付与する事など造作(ぞうさ)も有りませんからね。
またエントリークラスを購入したお客さんが再びオーダーしてきたり裕福(ゆうふく)になる毎(ごと)に10ゴールド、100ゴールド、1000ゴールド、1万ゴールドと高い物を買ってくれますからね。
仮面は身に着ける物で必ず相手の視界(しかい)に入るものですからファッションアイテムとして重要な地位に位置付けられていてその為それだけお金を使う神々がいるという訳です。
また仮面は100万ゴールドや1000万ゴールド、1億ゴールドなど勇者が買える程のお金を注ぎ込む事が貴族達の間で一種のステータスになっています。